最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1429号 判決 1948年12月24日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人越川忠明の上告趣意について。
論旨は、要するに、昭和二二年六月一七日東京地方裁判所において判決を言渡され目下東京高等裁判所に繋屬中の、被告人に對する強盗幇助罪と本件とを併合罪として處罰を受けるために、両件を併合して再審理して貰いたいという主張に歸する。しかし同一被告人に對し同時に繋屬した數個の被告事件を各別に審判するか又は併合して審判するかは、審理の便宜上裁判所が自由に決し得る職權に屬することであって、必ずしも併合して審判することを要するものでないこと、屡々判例の示す通りであるから、論旨は理由がない。
辯護人有田順吉の上告趣意第一點について。
(一) 住居侵入罪と強盗罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行爲は強盗罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であり、しかも通常右両罪の間には手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が右両罪を刑法第五四條第一項後段の所謂牽連犯として擬律しているのは正當である。所論のように、住居侵入から退去迄の一連の行爲が一個の脅迫行爲として不可分のものであったという所論は、原審の認めない事実を主張することに歸する。從って強盗罪の外に住居侵入罪が成立することを否認する論旨は理由がない。
(二) 銃砲等所持禁止令違反罪と強盗罪との關係についても、前者は銃砲等の不法所持自體によって成立し、その犯罪構成要件も被害法益も後者とは異なるのみならず、銃砲等の不法所持は強盗罪の要素に屬するものではない。それ故に被告人が日本刀を所持したのは時間的には強盗行爲の間だけであったとしても、強盗罪の中に銃砲等所持禁止令違反罪が吸收せられて、強盗罪の外に別罪が成立するのではないという所論は採用できない。よって論旨はいずれも理由がない。
同第二點について、
記録を調べてみると、本件第一審判決書中に、「判事池田正亮」とあるのは、「判事補池田正亮」と書くべきところを、不注意に「補」を遺脱したものであることが看取できる。從って、判事池田正亮なるものは実在しないから、第一審裁判所は適法に構成せられていなかったという所論は、理由がない。假りに第一審の裁判に關して違法があったとしても、本件上告は第二審に對するものであるから、そのことは適法な上告理由とならない。論旨は、第一審の違法を見逃した原審判決は違法である、と主張しているけれども、第二審は第一審とは別個の覆審であるから、第二審が第一審の瑕疵を不問にしたとしても、これを違法とする理由とはならない。よって論旨は理由がない。
右の理由により刑事訴訟法第四四六條に從い主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)